基礎的なプレゼンテーションの構成とは‐O-PREPs-Oの話‐

「プレゼンテーションの構成って、何よ?」
 今この記事を見ている多くの人は、きっとそんな疑問を抱くだろうと思います。多くの教育課程ではプレゼンテーションに関する講義は殆どありませんから、その疑問も尤もでしょう。
 別にプレゼンテーションの構成を知らなくても、一人のプレゼンターとして立つことは出来ます。センスの有る一部のプレゼンターは、場数を踏む内に自ら基礎的な構成の幾つかを見抜き、更にアレンジを加え、自分のプレゼンテーションスタイルを確立できるでしょう。仮にあなたがまだ基礎的な構成を知らないままのプレゼンターでも、悲観することは有りません。
 ここでは、私が知っている幾つかの基礎構成の中から、最も愛用している"O-PREPs-O"というプレゼンテーションフォーマットを紹介したいと思います。


 ところで、プレゼンテーションの5W1Hは書けましたか?もしまだ書けていない人が居たら、是非まずは5W1Hの書き出しをしてから、この記事を読み進めて下さい。

PREPフォーマット

 "O-PREPs-O"フォーマットの紹介をする前に、このベースとなった"PREP"フォーマットについて、簡単に説明しておきましょう。なに、何ら難しいことは有りません。PREPとはそれぞれ、

  • P = Point:要点、結論、主張
  • R = Reason*1:理由、根拠、理論
  • E = Example*2:事例、具体的な説明
  • P = Point:要点、結論、主張の再提示

を示し、それぞれをPREPの順に話していくスピーチ手法がPREPフォーマットです。あなたが海外の先生にスピーチなりプレゼンテーションの指導を受けた経験があれば、もしかしたら一度くらいは見聞きしているかも知れません。それ程に、使い古されたスピーチ手法の一つです。


 PREPフォーマットについては多くの解説をインターネットで見ることが出来ますので、ここでは一つ、簡単な例を示すだけにしておきましょう。PREPフォーマットに則った、「お勧めのラノベ」をテーマとしたショートスピーチです。

  • 私が今日オススメするライトノベルは、鷹見一幸の「ご主人様は山猫姫」です。
  • 私がこの本を勧める理由の一つは、このライトノベルライトノベルらしからぬ、しっかりとした背景設定を持っている事にあります。
  • 例えば物語の中に「シムール族」という遊牧民族登場しますが、この民族は匈奴という過去に実在した遊牧民族をモデルとして描かれており、彼らが用いる兵法や生活様式の多くは、匈奴の特徴に基づいた一貫性のあるものです。物語の主舞台となる延喜帝国が、10世紀前後の中国をモデルとして描かれている事も、物語の奥深さに一役買っています。
  • ライトノベル好きだけでなく、純文学好きにもオススメできるような濃い話、「ご主人様は山猫姫」を是非一度読んでみてくださいね。

 スピーチ自体は即興かつうろ覚えの知識で作ったものですから*3、その良し悪しは脇に置いておくとして。PREPフォーマットに則れば、適当な内容でもそれなりに見えるスピーチが作れる事は、何となく理解して貰えるのではないかなと思います。

O-PREPs-Oフォーマット

 さて、それでは本題、"O-PREPs-O"フォーマットについて紹介しましょう。
 O-PREPs-Oの内、PREPの部分は先程の説明の通りです。PREPの後ろに付いている"s"は、「複数形のs」だと思ってもらって差し支えありません。その前後をサンドイッチしている"O"は"Overview"の"O"です。以上を纏めるとO-PREPs-Oフォーマットとは、

  • O = Overview:話のあらまし、大まかな流れ
  • 以下のPREPを数セット
    • P = Point:要点、結論、主張
    • R = Reason:理由、根拠、理論
    • E = Example:事例、具体的な説明
    • P = Point:要点、結論、主張(要の再提示)
  • 0 = Overview:話のあらまし、大まかな流れの再提示

の様な構成を表している事が分かります。これが、私が最も愛用している、プレゼンテーションの基礎構成*4です。
 「PREPを数セット」と言うのは、一つのメインテーマに対して、幾つかのポイントを話す事を意味します。もしイメージを掴みにくいなと思ったら、私が過去に発表した際の資料を見てみてください。この資料で私は、「プレゼンテーションを再発見する」というメインテーマに対して、「思索する時」「構築する時」「発表する時」の3つのポイント*5を挙げてプレゼンテーションを行いました。


 さてここで、「PREPを数セットって、具体的に何セット?」という疑問が湧いてきた人も居るのではないでしょうか。
 私の経験則では、恐らく「3つ」が最適なPREPのセット数です。今まで教えを受けてきた多くの先生方も、大抵「3つのポイント」を推奨していました。勿論、プレゼンテーションの内容や時間によって、2つや4つのポイントに言及しても良いでしょう。けれどやっぱり私は、「基本は3つ」だと考えています。例えて言うなら、二脚ではやや安定性に欠け、四脚だとかえってグラつきが目立ってしまい、三脚だと丁度良く安定を保てる、と言った所でしょうか*6。この辺りは、基礎構成に慣れてきた頃に、自分なりにアレンジを加えてみるのも面白いかも知れません。

やってみる

 何事も実践有るのみ、という事で、そろそろ例を出してみましょう。
 プレゼンテーションの5W1Hの記事と同じく、「あなたが決めた自由なテーマで、10分間のプレゼンテーションをして下さい」という変わった就職試験に臨むという想定で、試験で行うプレゼンテーションの構成を作ってみましょう。5W1Hの所で書きだした、自分の5W1Hを見直しながら作ってみて下さい。せっかくO-PREPs-Oフォーマットを紹介したので、勿論このフォーマットに則って構成してみます。ポイントの数も、今回は3つにしてみましょう。
 ここで気をつけて欲しい事は2つあります。1つ目は、今回作るのは構成、言わばプレゼンテーションの骨格ですから、具体的な中身まで書く必要は無いということです。精々、3つのポイントと、そのポイントの中で言及する内容を箇条書する程度で良いでしょう。2つ目は、PREPの内、RとEを無理に分ける必要は無いということです。話題によってはRとEを切り分ける事が難しい事もあるでしょうし、そもそもO-PREPs-Oは1つのフォーマットに過ぎません。そこに囚われて時間を費やすよりも、3つのポイントがメインテーマをしっかりと支えているか、ポイントの中で言及するRとEに不足が無いかの確認に時間を費やすほうが、よっぽど建設的でしょう。




 どうでしょうか?
 模範解答とはいきませんが、私ならこう作るでしょう。*7

  • O:プログラミングとの関わりについて話す事と主な3つのポイント
  • P1:プログラムとの出会い
    • R+E:海釣りジョニーとENDORでねじ曲がった人生
  • P2:高専で培った知識欲
    • R:同じ学科の「変なやつら」から受けた影響
    • E:変なやつと出場したプロコンを通して
  • P3:プログラミングを通じた交流
    • R:自ら発信する楽しみ
    • E:開発者だけでない、ユーザーとの交わり
  • O:プログラミングとの関わりについて話してきた事と触れた3つのポイント


 架空の想定で作っているプレゼンテーションですから、上に書いた私の経歴は、決してすべてが正しい訳ではないことを、ここで断っておきたいと思います。けれど、何となく雰囲気は掴めたのではないでしょうか?後はここに多少の肉付けをすれば、それなりのプレゼンテーションになりそうな空気が感じ取れるのではないかなと思います。

O-PREPs-Oフォーマットから見える真実

 今まで紹介してきたO-PREPs-Oフォーマットは、幾つかあるフォーマットの1つでしか有りません。ですが、かなり応用範囲の広い、汎用的なフォーマットの1つだと、私は考えています。是非、今後のアレンジのベースとして、覚えていてくれたら嬉しいです。


 所でこのO-PREPs-Oフォーマット、お気づきの方も居るでしょうが、プレゼンテーションの為、と言うよりは、スピーチの為の基礎フォーマットと言ったほうが良いでしょう。派生元のPREPフォーマットの源流を調べきれていないので断言は出来ませんが、恐らくPREPフォーマット自体は元々、スピーチのベーシックフォーマットだったのではないかなと考えています*8。けれど、スピーチの為のフォーマットだったとして、プレゼンテーションに役立たないなんてことは有りません。いえ、スピーチの為のフォーマットだからこそ、プレゼンテーションにも役立つ、と言うべきでしょうか。
 少し私個人の偏見が混じりますが、私はプレゼンテーションを、スピーチ+補完資料(多くの場合スライド)と考えています。あくまでスピーチが主体である以上、スピーチのフォーマットだろうがプレゼンテーションのフォーマットだろうが、相互に利用し合うことが出来るとも考えています。
 もし自分のプレゼンテーションを更に良くしたいと思ったら、プレゼンテーションだけでなくスピーチにも*9、たまには耳を傾けてみては如何でしょう。

*1:Reason&Realityとしている説明も有るようです

*2:Example&Evidenceとしている説明も有るようです

*3:因みに、「ご主人様は山猫姫」は実際に私が好きなライトノベルの一つです。興味を持ったらお手にとって見て下さい。

*4:この構成は私が発案したものではなく、私のプレゼンテーションに大きな影響を与えた、Ms. CBから教えられた物です。彼女はこのフォーマットを、彼女の先生から教えられたと話していた記憶があります。

*5:ただ、この時の裏テーマが「プレゼンはスライドじゃないんだ!」だった為、構築する時は深く触れずに流してしまいました。

*6:かの有名なスティーブジョブスのスピーチも、ポイントを3つに絞っていますし、3つのポイントに言及するのが最も話しやすい、聞きやすい構成なのだと思います。

*7:Caitsithさんの指摘を受け、Oの追加と、RとEの表記の追加を行いました。@2012-2-5

*8:PREPフォーマットの特徴の1つに、結論を最初に言ってしまう点がありますが、これは自分の立場を最初に明確にしておく事が多いスピーチに向いているのではないかと考えている為です。ただし、源流がハッキリとしていない以上、あくまで一個人の妄想でしか無いことを断っておきます。

*9:他にも、落語や演劇、ミュージカル等、声を出して行う表現手法は、参考になる物が多いですね。