序文

 世の中を探してみると、意外と多くの、しかも効果的な、プレゼンテーションに関するTipsが溢れているのに気がつきます。それは或いはプレゼンテーション zenかも知れないし、TEDのスピーカーによる非常に魅力的な作品かも知れませんね。世界を相手に敏腕を振るう指導者たちのスピーチも、多くの学びを私たちに与えてくれるでしょう。けれど、プレゼンに触れたばかりの私にとって、こういったTips達はあまりに眩しすぎて、納得こそ行っても自分のプレゼンテーションに落とし込めなかった覚えがあります。
 もし、あなたの運が良ければ、スピーチやプレゼンテーションの先達に、自分のレベルに合った指導を受けることが出来るかも知れません。問題は、その機会がプレゼンターの絶対数に対して圧倒的に少ないことです。多くのプレゼンター達は、身近な好例やネットの海に無造作に転がる情報から、独学でプレゼンテーションを組み立てる必要に迫られます。それは時に、非常に苦痛を強いられる作業でしょう。


 けれど私は、プレゼンテーションの本質は苦痛ではないと考えています。人に自分の考えを伝え、それが理解された時の快感は、何にも代えがたいものだと考えています。そして、一人でも多くのプレゼンターに、苦痛ではなくプレゼンの快感に気づいて欲しいとも考えています。
 その為には、暗中模索で一からプレゼンテーションを組み立てるのではなく、何か、平凡でも良いから基本的なプレゼンテーションの組み立て方を知っている必要があるのではないだろうか。そう、私は考えました。


 少し個人的な話をすると、実は私はプレゼンターの中では恵まれた環境を過ごしてきました。これまで、何度かプレゼンテーションやスピーチの指導を受ける機会を得て、様々なプレゼンテーションの戦略を教わって来ました。そんな経歴柄、自分がプレゼンテーションをする中で気づいたちょっとしたTipsも、一つの戦略として扱えるように考察し纏める癖がつきました。今では、これまで教えられたり気づいたりして蓄積した戦略に基づいて、計画的にプレゼンテーションを組み立てています。
 その成果か、意外と多くの人がプレゼンテーションの腕を褒めて下さいます。そうして天狗になった私がふと思ったのは、「感情に頼らない自分のプレゼンテーションなら、少しは他のプレゼンターの参考にもなるんじゃないか?」という考えでした。


 以上の考えが結びついた結果が、この連載記事です。
 連載が完結しない内にこの序文を読んでいるあなたには、私の筆は遅い事と、そうは言っても私自身、新米プレゼンターからようやく片足を引き抜いただけな事の2つをお知らせしておきたいと思います。きっと私は10の無駄言を勿体つけてゆっくりと書き上げることでしょう。それでも、もしかしたら11個目の無駄言は、誰かにとって有益かも知れない。
 だから私、変態猫あるいはきまぐれ猫は、自分が普段のプレゼンテーションをどんな戦略で組み立てているかを、ノートに残しておこうと思います。